複合性局所疼痛症候群(CRPS)の改善効果
○来院までの経緯 (43歳 男性) / 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
平成17年5月に階段から転倒して右足首を強く捻転したことにより、右腓骨骨折を負った。約一ヶ月間の手術入院を終えた後、骨折術部の痛みは徐々に取れたものの、退院してから3ヶ月を経過しても、右足関節部から足背部にかける不快な疼痛感が軽快しないどころか、むしろじわじわと痛みが増してくるような傾向がみられた。
特に体重が右足に加わると、一層その痛みが右足に強く出現し、杖を使ってもなかなか思うように歩行できなかった。常に不自然な歩行姿勢を強いられることにより、次第に下半身の筋骨格系の不均衡が生じ、右足首の部分だけでなく、腰部から両大腿部〜下腿部まで慢性的にヒリヒリ、ピリピリする痛み、またつっぱり感や脱力感などの症状に苛まれるようになった。
痛み止めのブロック注射を始め、鎮痛薬、湿布薬、ヒアルロン酸の局所注射、整体、鍼など数多くの治療を試みてきたが、どれひとつとして満足のいく鎮痛効果は得られなかった。
どの様な治療を試みても症状が改善しない為、平成19年12 月に再度、頚部、腰部、足関節などの全身精密検査を受けてみたが、右足関節部から足背部にかける不快な疼痛感、腰部から両大腿部〜下腿部まで慢性的にヒリヒリ、ピリピリする痛み、またつっぱり感や脱力感などの症状の原因ははっきりせず、治療に関してもお手上げの状態であった。
平成20年3月下旬、当クリニックの医療活動をインターネットを通じて知り、来院された。
○治療経過
初診時の症状は、右足関節を境にして特に右外側足背部から第1〜第5足趾までが、如何にもすべでの組織細胞の循環代謝が阻まれて血も通っていないように、暗赤紫色となり硬く盛り上がっていた。その皮膚の温度は、左足の同部位に比べて明らかに冷たかった。
また、足関節部全体の動きがかなり制限されており、関節同士がまるで接着剤でくっ付けられたようにカチカチ、ゴツゴツしている印象を受けた。もちろん右足関節の患部における耐えがたいうずくような持続痛のみならず、両足全体の筋肉の痛み、特に右下腿外側部の重だるさや、足趾までの痺れも症状の深刻 さを物語っていた。それ故、歩行中は右足を持ち上げることさえままならず、千鳥足で引きずるような跛行の姿がとても痛々しかった。これは単なる足関節骨折の術後性疼痛によるものではなく、恐らくすでに厄介な、いわゆる複合性局所疼痛症候群(CRPS)にまで発展した重症の痛みのケースと思われた。
早速それに準じて、まず滞っていた局所の流れが順調になるように遠絡治療を施した。治療中は病状が重いだけに、足の患部に対応する身体各所の治療ポイントを押さえるたびに、強い不快な衝撃を感じられた様子であったが、治療過程が終わった途端、足患部の痛みは嘘のように軽くなり、今度はとても不思議ほど愉快な衝撃感を覚えたという。
しばらく間をおいて再度患者様に尋ねたところ、右足の患部の痛みが全く無くなっただけでなく、足全体の痺れや重だるさなどのすべての症状も治療前の疼痛評価尺度(VAS)が10から3まで軽快した。その経過は一週間後の再診時も、なおVAS 4,5の程度に維持されていた。それから週に一回の治療を行うたびに病状がさらに軽減しつつ、計5回の治療を終えた現在では、病状全体は常時VAS が2以下に保たれている。
遠絡療法による治療は、殆ど一日中立ち仕事が要求される患者様ご本人にとっては、とても福音となる治療と喜ばれている。
○特記事項
交通事故による幹線道路の渋滞に伴う物流システムの停止や障害にもなぞられるように、外傷性複合性局所疼痛症候群(CRPS)の起因は、まず局所の損傷(交通事故)から同部を通っているすべての生体の流れ道(幹線道路)の一時的な遮断によるものと考えられる。
交通事故の発生により、通行止めとなった道路では、それまでそこを行き来していたあらゆる物流、すなわち生体物質成分の往来がたちまち断ち切られた状態となり、いわゆる生体物流システムの機能不全に陥ってしまうわけである。そこで自力でも他力でも、とにかくこの流通路の再開をうまく図ることができなければ、物流システムの機能の復起や再稼動はあり得ない。それどころか、その悪影響がさらに広範囲に及んだ場合、さらに様々な障害、すなわち多彩な病状変化を引き起こし、進行する恐れが出てくる。
以上の病因病態を踏まえて、外傷性複合性局所疼痛症候群(CRPS)に対する治療の大原則は、一刻も早く障害領域における交通路、すなわち生体の流れ道の再開や繋ぎを図ることがとても肝心となる。