足関節捻挫と遠絡療法
■遠絡療法とは
 遠絡療法の正式名称は「遠道相応穴位経絡療法」という。これは上海中医薬大学の劉教授により命名され、その治療理論は「一本鍼」を原点としている。ここでいう「一本鍼」とは、決して患部に触れることなく、患部と対応する他の部位(治療ポイント)に鍼を一本打ち、患部の痛みを2分以内に70%以上消失させるものを定義とする。この治療ポイントは、筆者が上海中医薬大学で得た鍼の基礎知識を基に十数年間臨床研究を重ね、約10,000例の臨床データから導き出したものである。治療ポイントのすべては各経絡上に存在し、全部で100以上の細かいポイントに分類されている。
 遠絡療法は「一本鍼」の上に西洋医学と東洋医学の問題点を修正することにより、明確な理論体系化がなされた新しい発想と手技による、難治性疾患の治療を目的とした治療法である。
■遠絡5D医学の基本的考え方
 本来の医療とは、3次元の「Body」を治療するのでなく、5次元の「Life」を治療することである。人間は次の3つから構成されている。
  1. Body(身体)
  2. Life (生命)
  3. 思考力
 今までの医学はbodyを治療していたがこれは間違いであると考える。あくまでLifeを治療しなければならない。もしも、Lifeに問題が生じた場合、その原因は必ず局所(点)の問題から横の流れ(各臓器の相互関係)の問題へ、そして縦の流れ(臓器系統の本体)の問題へと発生し、これら3つの関係から1つの症状が発生し、2つ4つと増え続け数限りない症状が発生する。
 治療に当たる場合の遠絡医学の考え方は、一般的な治療法のように症状を分類し検査を行い、病名を探し出して治療をするのではなく、その大元の病態を探し原因から治療していくというものである。
■遠絡5Dimention(5D)医学の特徴
 次に遠絡医学の主な特徴を述べる。
  1. 従来の医療には属さない日本発の日本型医学である。
  2. 従来のBody(3次元)の医療からLife=生命(5次元)の医学への転換。
  3. 西洋医学と東洋医学の欠点を修正した新しい医学である。
  4. 鍼は打たない。注射はしない。薬は使わない。痛いところには触らない。
  5. 病名に沿って治療するのではなく、新しい理論の基に病理・病態を探し出し、3次元の診断法に沿って治療する。
  6. 相応・相対関係を利用し、それを基に理論を開発した5次元の治療法である。
  7. 局所病変に対して即効性がある。
  8. 難治性疾患に対して顕著な効果がある。(難治性疾患例=CRPS・PHN・手足の痺れなど。)

■Life flowの基本的考え方
 Lifeを治療するためには必ず「生体の流れ(Life flow=血液・リンパ・酸素・栄養素など)」の調整を基本とする。なぜならLifeが問題を起こすのは、Life flowが潤滑に流れていないからである。Life flowが潤滑に流れればすべての病気は消えてくる。遠絡療法はLife flowをどのように調整していくかという治療である。
 例えば、車が走れるのはエンジン・ガソリン・車体があるから走れるのではなく、あくまでエネルギーがあるから走れるのである。エネルギーが問題を起こすのは、エネルギーの流れ(flow)に問題があるからである。故に、中枢神経由来の手足の痺れなどは、必ず中枢から病態に沿って順序だててLife flowが遮断されている箇所を流れるようにしていかなければ症状の改善は見られない。ただし、足関節捻挫のように局所(点)で発生したものは、原因(点)を調整すれば痛みはすぐに取り除くことができる。


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■季節と原発局所性痛の関係
 遠絡療法では足関節捻挫のように原発局所性疼痛の場合「季節」の考え方が非常に重要となってくる。
 右の胆経(木)の足関節痛が発生した場合を例とする。
 冬には木は枯れている状態にあるので、直接木を切ることは容易である。即ち、左の肝経(木)の「蠡溝(絡穴)」を押しながら同じ左の肝経(木)の「中封」を瀉することにより、右胆経の足関節の痛みはすぐに消える。(図2)ただし、春になると木はすぐに成長するので、冬のときと同じ治療をしても痛みはすぐに戻ってくる。この場合は、「土」を掘ってから木を切る。即ち、右の胃経(土)の「伏兎」を瀉し、次に右の心経の「通里(絡穴)」を押しながら同じ右の心経の「神門」を瀉すれば痛みは消える。(図3)また、夏は木が育ち強くなるので、いくら土を掘って木を切っても木が倒れることはない。この場合、夏の季節は水が少なく太陽(火)が強いことから、「土」と「水」を瀉することで大きい木でも簡単に倒すことができる。即ち、右の胃経(土)の「伏兎」と右の膀胱経(水)の「殷門」を瀉することで痛みが消える。(図4)秋になると木は枯れ始めてくる。ただし、まだ直接木を切ることは難しいので、斧(金)を強めて処理しなければならない。即ち、左の肺経(金)の「列缺(絡穴)」を押しながら「侠白」を補してから、左の肝経(木)の「蠡溝(絡穴)」を押しながら同じ左の肝経(木)の「中封」を瀉することにより、痛みは消える。(図5)
 この治療法は、捻挫に限らず原発局所性痛に対してはすべて同じ考え方であるので、以下に足関節上の経絡すべてに対する治療法を述べるので、機会があればお試しいただきたい。疼痛側はすべて「右側」として例を述べるものとする。


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●右膀胱経の足関節痛の場合
春: 右の三焦経の「消れき」と右の小腸経で「消れき」と同じ高さの部位を瀉する。
注1)小腸経の上腕には「穴」は存在しないが、遠絡療法では既存の「穴」と対応しないポイントが全体の3分の2を占める。小腸経のこのポイントも「一本鍼」で得た遠絡独自のものである。
夏: 左の脾経の「公孫(絡穴)」を押しながら「箕門」の少し下を補したあと、右の膀胱経の「飛陽」を瀉する。
注2)この「箕門」の少し下のポイントも遠絡独自のポイントであり、既存の「穴」では存在しない。
秋: 右の膀胱経の「飛陽」を瀉したあと、左の腎経の「大鐘」を瀉する。
冬: 右の三焦経の「消れき」を瀉したあと、左の肺経の「列缺(絡穴)」を押しながら「大淵」を瀉する。

●右腎経の足関節痛の場合
春: 右の三焦経の「外関(絡穴)」を押しながら「消れき」を瀉したあと、右の小腸経の「支正(絡穴)」を押しながら「消れき」と同じ高さの部位を瀉する。
夏: 左の脾経の「公孫(絡穴)」を押しながら「箕門」の少し下を補したあと、左の腎経の「大鐘」を瀉する。
秋: 左の腎経の「大鐘」を瀉したあと、右の膀胱経の「飛陽(絡穴)」を押しながら「崑崙」を瀉する。
冬: 右の三焦経の「外関(絡穴)」を押しながら「消れき」と「陽池」を寫する。

●右肝経の足関節痛の場合
春: 右の胃経の「豊隆(絡穴)」を押しながら「伏兎」を瀉したあと、左の大腸経の「偏歴(絡穴)」を押しながら「陽渓」を瀉する。
夏: 右の胃経の「豊隆(絡穴)」を押しながら「伏兎」を瀉し、次に右の膀胱経の「飛陽(絡穴)」を押しながら「殷門」を瀉する。
秋: 左の肺経(金)の「列缺(絡穴)」を押しながら「侠白」を補し、そのあと左の肝経の「中封」を瀉する。
冬: 左の肝経の「中封」を瀉したあと、右の胆経の「光明(絡穴)」を押しながら「丘墟」を瀉する。

胃経と脾経については以上の考え方とは若干異なるため、4月中旬から5月中旬まで及び5月中旬から6月初旬にかけての有効な治療法をそれぞれ明記する。

●4月中旬から5月中旬の治療法
  右胃経の場合
右の膀胱経の「殷門」を瀉したあと、左の心包経の「内関(絡穴)」を押しながら「大陵」を瀉する。
  右脾経の場合
右の膀胱経の「飛陽(絡穴)」を押しながら「殷門」を瀉したあと、右の小腸経の「支正(絡穴)」を押しながら「陽谷」を瀉する。

●5月中旬から6月初旬の治療法
  右胃経の場合
右の膀胱経の「殷門」を瀉したあと、右の三焦経の「消れき」を瀉する。
  右脾経の場合
右の膀胱経の「飛陽(絡穴)」を押しながら「殷門」を瀉したあと、右の三焦経の「外関(絡穴)」を押しながら「消れき」を瀉する。



 以上、遠絡療法による足関節捻挫の考え方及び治療法について簡単に述べた。
  ただし、これらはすべて遠絡療法の大まかな概要にすぎない。
  また、最後に、遠絡療法及び遠絡医学は従来の東洋医学とはまったく違った考えのもとになりたっているものであるということをご理解いただきたい。